日本はいつの間にか生産性の低い国になってしまいました。
OECDデータに基づく日本の時間当たり労働生産性は、52.3ドルで、OECD加盟38国中30位と、データ取得可能な1970年以降で最も低い順位だそうです。
日本は、かつては1995年に6位にランクインしていましたが、そこから徐々に順位を下げてきて、2023年は30位まで下がってしまいました。
そこにきて、近年では働き方改革が始まり、経営効率化による生産性向上も大きな柱ではありますが、
どちらかというと有給の取得率や男性の育休休暇などの休暇面や最低賃金の底上げなどが先行している感があり、経営者としては悩ましいことでしょう。
ここで一つの経営分析の指標を紹介します。
「人時生産性」という指標をご存じでしょうか。
人時生産性とは、「従業員ひとりが1時間でどれだけの利益を生み出しているか」を示す指標です。算式で表すと「売上総利益÷総労働時間」で求めます。例えば、売上総利益が1,000,000円で従業員の総労働時間が500時間だった場合、人事生産性は1,000,000円÷500時間=2,000円となります。損益計算書の構造を理解しているとわかるのですが、ここから人件費や家賃、水道光熱費などを捻出していきますので、2,000円では結構苦しいのがわかります。例えば神奈川県の最低賃金は、1,112円/時ですので。
たまに経営者の中には、売上ばかり注目している方を見受けます。売上が上がれば売上の増加に引っ張られて、利益も増えるはず、そうしたら従業員の給料だって上げられるはずと信じているようです。それはある意味正しくて、ある意味で間違っています。
現状の人時生産性を下げる仕事、つまり粗利が低い仕事や時間がかかる仕事は、忙しくなるだけで手元にお金が残りにくく、汗水垂らした割にお金が残らないのです。まさに貧乏暇なしです。
まずは、現状の人時生産性を求めてみてください。おそらく予想しているよりも低いことが多いのではないかと思います。そして、新しい受注があったときには、その受注金額の大きさだけでなく、その仕事にかかる時間も考慮して、その仕事が当社の人時生産性を上げるものかどうかも検討することが大事です。
一方で、人時生産性を高めるために安易に人件費を削減するなど、従業員の時間や心のゆとりがなくなって、不満が増殖する可能性もあります。そのため人事生産性を高めるためには、長期的な視点に立ち、従業員の育成や効率的な設備投資やオペレーションが必要になります。
最後に(公財)日本生産性本部で公表されている各業種の平均値を記載しておきます。参考にしてください。
小売業 2,444円、飲食店 1,902円
宿泊業 2,805円、製造業 2,837円