米大リーグの大谷翔平選手の元通訳の水原氏が大谷選手の口座から24億5000万円とも言われる金額を違法に送金したとのニュースが世間を騒がせています。違法ギャンブルの返済のために、不正に胴元に送金したとのことです。しかし、これは中小企業にとって対岸の火事ではないのです。
金額の大小はあれど、中小企業でも残念ながら従業員が横領したというケースは多々発生しています。現に私も数回直面したことがあります。
どのようなケースかというと、店長クラスが店舗の現金を使い込んでいた、営業担当がお客様からいただいた代金を着服していた、経理担当者が会社の金を抜き取っていた、などです。なぜこういうことがしばしば発生するのでしょうか。
圧倒的に多いのは現金商売であるケースです。最初は一時的に借りるつもりでレジ現金などから拝借していたが、それが繰り返し行われることによって、給料や小遣いでは返せないほどの金額になっていることが多いです。
内部統制という言葉をご存じでしょうか。専門用語で内部統制とは「企業の内部において、財務諸表の信頼性の確保、事業経営の効率性の向上および事業経営にかかわる法令の遵守を促し、不正や違法行為などが事前に防止されるよう、基準や手続を業務ごとに定め、それに基づいて管理・監視をおこなうこと」と定義されますが、簡単にいえば「不正がおこらないような仕組みづくり」です。大企業では不正がおこらないように内部統制がしっかりしていないと上場審査で撥(は)ねられますし、公認会計士による上場企業の会計監査においても内部統制監査が義務付けられています。
中小企業においても内部統制の仕組みづくりは社長の大事な仕事として必須のものとなっています。
具体的な対応例を挙げていきます。
1.現金の取り扱いを減らす
多額な現金が手元にあることは非常に危険といえます。例えば現金払いから銀行振込やカード決済、コンビニ払いなどにシフトしていきます。
2.現金残高を毎日確認する
毎日の締めで現金の残高を確認します。レジのジャーナルと一致しているかを確認することや、その日の現金売上を翌営業日にはそのまま銀行に入金して通帳に記録します。
3.現金の実際残高と帳簿の預金残高を合わせる
実は実際の現金残高が帳簿の残高と合ってないという会社は多いです。現金の残高が帳簿とぴったり一致していれば仮にずれたときにすぐに発見できます。
4.経理処理はダブルチェックにする
大企業では必ず伝票の起票者と承認者が別になっています。自分で伝票を作成し、承認してしまうと自己承認となり、不正が起こりやすくなります。
5.社長(事業主)が自ら帳簿や現金残高を定期的にチェックする
横領が発見された時、往々にしてトップが経理を任せきりにしていたというケースが多いです。どんなに信用できると思っている従業員でも必ず定期的にトップがチェックすることが必要です。まさに大谷選手と水原氏の関係がいい例です。また、定期的にチェックすることで心理的な牽制がはたらきます。
どうでしょうか?自社の内部統制を見直して、上記のうちいくつかでも使えそうなのは早速実行してみてください。